安寿の小径

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原発再稼働はやっぱり国民に利益なし

現職のキャリア官僚が書いた反原発の本があると聞いて、さっそく読んでみました。


作者は若杉冽というペンネームの現職キャリア官僚だそうです。
2013年から2冊出版されていて、『原発ホワイトアウト』は2013年9月に出版され、その続きという形で、『東京ブラックアウト』が2014年12月出版されました。


両方とも小説仕立てになっていますが、『裏をとれない限りなく事実に近い』(著者の言葉より)読み物だそうです。
登場人物にはモデルがいて、そのモデルが誰なのか、容易に推測できるような名前になっています。
内部告発本に近いのでしょう。


原発ホワイトアウト』では、電力会社の悪名高い『総括原価方式』という料金の決め方を利用して、電力会社がいかに巨額の裏金をプールする仕組を築き、またその潤沢な資金を麻薬のように使って、電力会社が自社の利益を守り、拡大するために、官僚や政治家やマスコミ等をいかに飼いならしていくのかが細かく具体的に描かれています。
それが『電力モンスター・システム』として動き出し、今や一個人では止められない程の大きな力となって世の中を動かしているのです。


諸悪の根源は多くの人が指摘している通り『総括原価方式』という電気料金の決め方です。
かかったコストに一定の報酬率を乗じて料金を決めるのですが、独占企業ですから、高くても必ず売れます。
経費に一定の報酬率を乗じるのですから、当然、経費を高くすれば、言い換えれば浪費するほど報酬が増えるシステムです。
何でもかんでも経費に計上し、電力ビジネスには素人の官僚が査定するのですから、査定は非常に甘いのです。


電力会社が関連企業に発注する資材、燃料、検針や集金業務の委託、施設の整備や清掃業務に至るまで、世間相場の2割増しの料金で発注し、その5パーセントを電力会社が作った任意団体に預託金としてキックバックさせ、その資金が年間800億円にもなると言いうのですから驚きです。
燃料購入でも商社を通じて資金が海外にプールされているのだとか。
私たちは不当に高い電気料金を払わされ、原発事故が起これば、巨額の税金がその処理のために使われており、わたしたちの収入からも『復興税』と称する費用が天引きされています。


福島の事故がまだ片付かず、まだ多くの人が仮設住宅に取り残されているというのに、電力会社のマネーに汚染された政治家や官僚たちは原発を再稼働させていくシナリオを考え、更に電力会社の利益が大幅に減ってしまう発送電分離を阻止する方法を考えているのです。
(発電が独占でなくなれば、おいしい総括原価方式は採用されなくなりますから)


その癒着に切り込んでいこうとした女性が官僚を誘惑し、官財癒着の証拠情報をマスコミに流すのですが、そのあたりは1972年の毎日新聞の記者西山さんの機密漏えい事件をモチーフにしているようです。


西山事件と同じように、マスコミを総動員して、男女関係とそれを利用して情報を得た事の方に世間の耳目を引き付け、官財癒着の事実への追及はなされず、東京地検特捜部も、官財にはおとがめなしで、機密を漏えいした二人が逮捕、収監されます。


また地元原発の再稼働に反対する新崎県知事が、でっち上げ事件で逮捕され、再稼働のための準備が着々と進められていきます。


原発ホワイトアウト』の終章は爆弾低気圧が強風とともに日本海側の山沿いに5メートル超の積雪をもたらした大晦日の夜、知事が逮捕された後、再稼働された新崎原発の高圧送電線の鉄塔が二人のテロリストによって、爆破され倒壊した所から始まります。


新しい規制基準では、原発の敷地外の警備対策は一切定めていず、その送電塔は電気事業法の定める施設基準に適合するように建てられてはいるものの、送電路の基準に関しては1964年に法律が制定されてから、大きな見直しはされていないのだそうです。
「一応、鉄条網で足元には囲いが施され、『立入禁止』『高圧電線』『危険』との表示はあるが、誰が監視しているわけでもない。」(『原発ホワイトアウト』より)


「送電線に支障を来し、発電した電気を送り出せないことになれば、原発自体をスクラム(緊急停止)したとしても、外部電源か非常電源かで冷却し続けない限り、崩壊熱で炉心がメルトダウンする…。」(『原発ホワイトアウト』より)


そして事態は大雪のせいでどんどん悪い方に進み、メルトダウンが始まってしまうのです。


避難計画など、もともと住民の安全を考えたものではなく、原発の地元住民をいかに上手にまるめこむかのためだけに考えられたものなので、実際事故が起きたら何の役にも立ちません。
パニックに陥った住民たちが右往左往する中、電力会社幹部と資源エネルギー庁の幹部は
「汚染はじわじわと地下水や土壌から広がるだろうが、汚染の程度としては、フクシマの二倍にはならないだろう。局地的な汚染に留まる。
そうすれば、フクシマと手順は同じだ。一、二年は原発反対の嵐が吹き荒れるが、電力システム改革さえ送らせて骨抜きにすれば、必ず政治家は総括原価方式のもたらす電力のカネに戻ってくる」(『原発ホワイトアウト』より)


『東京ブラックアウト』では新崎原発事故によって混乱に陥った国が、どのような施策を取るか、東京がどんなふうに廃墟となってゆくかが描かれています。


福島の原発事故の時も一部でうわさされていましたが、『東京ブラックアウト』によるとやはり、政治家やキャリア官僚の家族は、官房長官が事故についての記者会見をする前に情報を得て、空港や駅が大混乱する前に、東京や日本を離れたらしいのです。
それもそのはず、知らぬは庶民ばかりなりで、3.11の後、関東地方全域、もちろん東京もかなり危険な状態だったのです。
もし、放射性プルーム(別名黒い雲)が上空を通っている時に雨が降ったら、福島県飯館村と同じ程度汚染され、住めなくなっていたかもしれないというのです。


2015年10月1日の朝日新聞夕刊に「トモダチ作戦 賞賛の陰で」という見出しで、東日本大震災の時、「トモダチ作戦」にあたった米国の原子力空母「ロナルド・レーガン」の当時の乗組員250人が、福島の原発事故で被ばくした事による健康被害を訴えて米国で訴訟を続けているという記事が載っていました。


その記事によると3月15日「艦長が脱塩水を飲まないように」と命じたが、シャワーを浴びたり、水を飲んだりした後の事だったというのです。その後も甲板の洗浄に汚染された海水を使ったのだそうです。乗組員2人が死亡。被害に遭ったシモンズさんは「11年末、車を運転中に突然意識を失った。歩けなくなり、髪の毛が抜け、体重も十数キロ減。足の痛みは腕や胸に広がり、膀胱不全、などを発症している」といいます。


「福島の沖合160キロ先でデッキに出ていた米空母の乗組員は、一カ月の上限とされている線量を、1時間で浴びたんですよ」(『東京ブラックアウト』より)


チェルノブイリの事故でも、放射性プルーム別名黒い雲は気流に乗ってかなり遠くまで飛んでいったことが知られています。
関東地方や東京にも3月15日高濃度の放射性プルームが到達していたのだそうです。


その頃、東京葛飾区の金町浄水場の底にたまった泥から高濃度の放射性物質が見つかったとかで、妊産婦や乳幼児のいる家庭に水が配られたという記憶が有ります。
でもそのほか、水道水を飲まないようにという様な警告もなく、特別な措置もなく、私たち23区の区民は普通に水道水を使って料理したり洗濯したりしていました。
当然東京も多少の汚染はあるはずだと思っていましたが、そんな高濃度の放射性プルームが東京の上級を通過していたなんて思っていませんでした。


東京は福島から約200キロくらいでしょうか。私たちが想像していたよりはるかに汚染されていたわけですね。
私は老人だから諦めがつきますが、将来ある人たち、子供たちが心配です。


『東京ブラックアウト』では事故が起きたら実際にどうなるかということが具体的に書かれていて、ホワイトアウトの最終章で電力会社幹部と資源エネルギー庁幹部の話が実現されていく様子が描かれていきます。


最後の所で、若杉さんという人、義憤を感じて我々日本国民の為に告発小説を書いてくださったのかと思っていたら、天皇のためだったんですって。


「自分たち国家公務員上級職は、天皇にお仕えする官吏だったのだ。」(『東京ブラックアウト』より)のですって。
突然幽霊に出会った気持ちです。
冗談ではありません。国家公務員は上級だろうとなんだろうと、国民の税金で雇われているんですよ。国民の為に働くって事、肝に銘じて下さい。


この本を読んでさんざん政官財の人々のひどさを見せつけられ、いい加減官僚不信に陥っていたのに、最後に「ブルータス、お前もか!」でしたね。
あやしげなキャリア官僚が書いた本なので、納得のいくところだけ参考にせてもらいましょう。


天皇がどんなに優れたお方でも、天皇親政には反対です。
天皇を政治的に利用してはなりません。
若杉さんから見ればおバカ揃いでも、一人の優れた人より、私は一般大衆による民主主義を大切にしたいと思います。
あっちに揺れ、こっちにぶつかりながら、一緒の国に生まれた私たち、一緒に痛みを分かち合い、一緒に希望を持って歩んでいきましょう。



           北千住のスピリチュアルな占い師    安 寿