F君、80年近く生きて来て、こんなに衝撃的だったことはなかったよ。
昨年の暮れ、居酒屋を経営するⅯさんから「F君が会いたがっていたよ。小学校の時、隣の席に座ってたんだってね。あなたにはいじめられたけど、会いたいんだって。だから、新年会でもやったら来てね」と電話があったの。
あなたとは小学二年生の時同じクラスで、あなたへの私の幼い恋心や当時のあなたの面影は覚えているのですが、隣の席だったかどうか、自分があなたにどう接していたのか、まったく覚えていないのです。
幼い恋心をどう表現していいか分からず、恥ずかしさもあって、きっといじめるような言動になってしまったのでしょう。
ごめんなさい。
でも、あなたがこの歳になって「会いたい」と言ってくださったことは、あなたもその当時の私の気持ちに気付いていらしたのじゃないかしら。
そしてそれを嬉しく思う気持ちが、いくらかあったのかもしれない。
などと、あれこれ勝手に想像して、あなたたちからお誘いが来るのを待っていました。
所が今年に入って、家のリフォームや引っ越しやらで急に忙しくなり、いつの間にかその事を忘れていたんです。
6月に入って中学時代のクラス会のお誘いを受け、昨年の暮れの話を思い出したってわけ。
あなたとは翌年のクラス替えで別のクラスになったまま卒業し、一緒に同じ区立中学校に進学したけど、クラスは別でした。
何せベビーブーム世代、8クラスもあったので顔を合わせることもあまりなかったと思います。
ただ部活だけは一緒でしたが、その時のあなたの記憶は残念ながらほとんどありません。
なぜって、その頃私は同じクラスの男の子に夢中で、あなたの事は忘れていましたから。
ごめんね。
30代の頃、私たちは同窓会で一回お会いし、その時の名簿が、数日前卒業アルバムを見ている時出てきたのです。
私があなたに急にお電話したのは、40年以上も前の、変色した古いその名簿にあなたのご住所と電話番号を見つけたからです。
他の友人の事を調べようと思って卒業写真や名簿を見ていたのに、あなたのお名前の方が先に目に飛び込んできたんです。そしたら急にあなたと直接お話したくなって、お引越しをされ、連絡つかない可能性はあったけど、ダメもとでお電話してみようと思ったのです。
電話がつながって「Fさんのお宅ですか?」と言ったら若い男性の声で「はい、そうです。」というお返事。内心「やった!」です。
ワクワクしながら「F様はご在宅ですか?」と聞いたら、「父は、2週間前に亡くなりました。」と言うではありませんか。
一瞬言葉も声すらも出なくて沈黙。やっと、知らずにお電話した非礼をお詫びして、お悔やみの言葉も言ったのか言わなかったのか思い出せないくらいの衝撃で、あわてて電話を切りました。
この前、植木に水をやっていたら、大きなアゲハチョウが飛んできて、私の周りをひらひら飛び回っていたのだけど、あれはやっぱり、あなたのお知らせだったのね。
蝶や昆虫は亡くなった人かわりに、その人の死を知らせに来るという事を聞いたことが有ったから、その美しいアゲハ蝶が、なんだか誰かの訃報を届けに来たような気がして、
「誰か亡くなったの?そのことを知らせに来たの?」とアゲハに問いかけたの。
アゲハは私の周りをひらひら飛び回ってから、しばらくしてどこかに飛んでいったのだけど。
あなたの訃報を聞いて、お会いできないままお別れしたことが始めはとても残念でした。
でも今はそれも神様のお計らいだったと思うのです。
こんな突然のお別れだったからこそ、あなたの面影と幼い恋の思い出が私の心に鮮明に浮かび上がったのです。
人生の黄昏時の道が寂しくないように、私の心を温めてくれる灯(あかり)が一つ灯された気がします。
F君、私はあなたとあなたへの想いを忘れないよ。
こんな私を思い出してくれて、会いたいと言ってくれてありがとう!
心からご冥福をお祈り致します。
北千住のスピリチュアルな占い師 安 寿