安寿の小径

北千住のスピリチュアルな占い師 安寿のブログ http://anju.cho88.com/

歌の楽しみ 歌の力

梅雨が明けた途端、梅雨の末期の様に蒸し暑い日が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私はバテバテで、何とか体調を保っている状態ですが、我が家の高齢猫は意外と元気で、食欲もまずまずです。
時々ご褒美にアイスクリームを一匙やると、喜んでペロリと舐めてしまいます。
猫は甘味を感じないので、きっと脂肪分がおいしいのでしょう。


それをじっと見ながら、私は我慢。今までのジムでの努力が水の泡になってしまいますから。4か月で、お腹周りがやっと2センチ減り、その喜びがアイスクリームへのブレーキになってます。


蜜蜂と遠雷』を読んで、改めて音楽の喜びについて考えましたが、私も65歳からボイストレーニングを始めて、好きで歌っていただけの頃楽しさとは違った、人生の更なる喜びを感じています。


今迄、コンサートやCDで耳にして憧れていた歌を自分が歌えるのですから、こんなうれしいことはありません。
もちろん下手なのですが、歌っている時はプリマドンナ気分。
それに、お腹から思いっきり声を出すことは生理的な快感です。
正い発声はすごいストレス解消なんです。
( 家族と猫と、ご近所の皆様にはご迷惑おかけしています。ごめんなさい。)


また難しい所を練習して練習して、マスターした時の喜び。先生に褒めていただいた時の喜びは、何物にも代えがたいものが有ります。
やっぱり、なんでも、苦労して苦労して、工夫して苦心することが、本当の喜びになるのですね。
人生の幕が引かれる前に、歌と出会えて本当によかったと感謝せずにいられません。
我を忘れて打ち込めるものを持った人は、何によらず本当に幸せだと思います。


私の歌の先生、ソプラノ歌手の大前恵子先生は、とっても気さくで面白い方です。
本当に歌が大好きでとっても教え上手。それこそクラシック音楽を広い場所にひっぱり出すような活動をたくさんなさっていらっしゃいます。


3.11の被災地でのボランティア演奏会を年に2回、もう6年も続けていらっしゃいます。その他、地域の主婦や社会人合唱団の指導、地域音楽祭への参加、月一回の歌声の会の集まりなど、実に多彩な活動を通じて、音楽の楽しさを積極的に発信し続けていらっしゃいます。


歌声の会では簡単なストレッチ体操、ボイストレーニングの後、ピアノ、フルート、ベースの演奏に合わせて、Jポップス、昭和歌謡、民謡、童謡、演歌まで、実に様々な歌を1時間ほどたっぷり歌います。
さらに大前先生が一曲、本格的クラシックやシャンソン、日本の歌曲などをご披露して下さるので、とっても贅沢で楽しみな歌声の会ですから、毎回100人を超える人たちが集まるのも頷けます。


先生は歌なら何でも好きとおっしゃるだけあって、ほれぼれするような美しいソプラノで演歌や民謡なども聞かせてくださり、「へぇ〜!クラシックっぽい演歌もいいわね!」と目からウロコ。新しい経験で毎回私たちを楽しませてくださいます。
なにせ、ソプラノ歌手が森真一の『おふくろさん』も歌うんですからね、聞いてみたいと思いませんか?


また、亀有リリオホールのリハーサル室で、先生は月3回『健康のためのボイストレーニング』という講座もなさっていますが、それもとってもユニークなトレーニングで、毎回定員いっぱいの30人ほどが集まります。


先生がこの講座を始めたのは、耳鼻咽喉科で老人たちの「最近声が出なくなった」という会話を耳にしたことがきっかけでした。
年を取ると声が出にくくなり、むせたり誤嚥で肺炎になったりするのは、ノドの周りの筋肉の衰えが原因だから、それを予防するために、ボイストレーニングを活用しようと考えたのだそうです。


ですから、このボイストレーニングは、口の周りの筋肉や、のどの周りの筋肉を鍛えるため、舌をいろいろな方向へ動かし鍛えます。
舌を出して発声したり、口輪筋を鍛える早口言葉の練習をしたり、また身体のあちこちを使って声を出す練習をします。
舌を思いっきり上に向かって出すと、お腹の筋肉まで動くという発見には驚きました。
舌を鍛えると体幹がしっかりするという事で、最近は『あ、い、う、べぇ〜』と最後に舌を出す舌の体操もあるようです。


またほんのちょっとした動きや口の開け方で声の調子や明るさが変わるのが面白くて、この講座もなかなかの人気です。


大前恵子先生は1年ほど前から、身体障害者の施設でボイストレーニングとみんなで歌を歌う会を月2回続けていらっしゃいます。
毎回20人ほどの入所者の方が参加されるサークルなのだそうですが、車いすの方や寝たきりの方もベッドに寝たまま参加されているのだそうです。


始めは先生もどんなふうに進めたらいいのか心配したそうですが、始めて見たら全く健常者と同じで大丈夫だったのだとか。


ここでも先生の人気は高くて、ちょっと強面の身体の大きな男性が、会が終わると毎回先生に握手を求めて、『先生、歌が上手だね〜!』とほめて下さるのだそうです。
そこに嘘偽りがないから「本当に嬉しいのよ」と先生はおっしゃいます。


私たちの様に自由に音楽会に行ったり、CDを聞くチャンスが少ない分だけ、彼らの感動は深く大きいのかもしれません。
もしかしたら、人生で初めて、本格的な生演奏を聴いたのかもしれません。
だから先生も一所懸命みんなが楽しんでくれるよう様々な工夫をなさっているのでしょう。


ある時、いつも童謡ばかりではなく、たまには歌謡曲などもやってみようかと『瀬戸の花嫁』を歌ったのだそうです。(この原稿を書いている時、この曲の作曲者平尾昌晃さんの訃報のニュースが流れました。ご冥福をお祈りいたします。)
そうしたら、ベッドに寝たきりの男性が声を上げて泣き始めて、とうとう最後まで泣いていたのだそうです。


その男性は50代位の寝たきりの方で、担当の職員によると小さい時からずっと寝たきりで、今迄泣くことはおろか、一切感情表現が無い方だったので、職員も皆びっくりだったのだとか。


泣いたのは悲しいのじゃなくて、きっと感動したからに違いありません。
嬉しかったのかもしれません。
瀬戸の花嫁』は1972年にはやったので、その男性がまだ幼い頃にお母様か誰かがよく歌ってらしたか、お家のテレビやラジオでよく耳にして、とても懐かしかったのかもしれません。


いずれにせよ、感情表現が出てきたのは喜ばしいことなので、先生は毎回その歌を歌う事にしたのだそうです。
もう、4回目になるそうですが、その男性は今も変わらず、『瀬戸の花嫁』を聞いては、声を上げて泣いているのだとか。


いいお話を伺って、聞いている私まで泣けてしまいました。
ベッドに寝たきりの男性が、心から感動できて本当によかったと、私まで嬉しくなりました。


奇しくも今日、7月26日は障害者施設でひどい事件があった日です。
それぞれがご家族に愛され、表現は出来なくとも、それぞれの心のアルバムに、それぞれの幸せな思い出を抱えた人たちを勝手に『不幸だ』と決めつけ、殺傷するという、信じられない程ひどい事件でした。


改めて犠牲者の方々のご冥福を心からお祈りいたします。
また、障害者の方々の日々がより安全でより幸せなものになりますよう、心から願っています。




            北千住のスピリチュアルな占い師   安 寿