安寿の小径

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秋の夜長にぴったりのすごい本!

今、寝る間を惜しんで読み続けている本があります。
今年3月、児童文学のノーベル賞とも言われる国際アンデルセン賞を受賞した上橋菜穂子さんの作品です。
それまで私は知らなかったのですが、20年以上前から日本国内の数々の児童文学賞を受賞されていて、児童文学では相当有名な方のようです。


大人にも人気があるという事で、どんな作品なんだろうと手にしてみたら、これがものすごく面白いのです。
私的には、悪いけれど、芥川賞直木賞の作品よりもがぜん面白いのです。


どこの国とも知れぬ、ちょっと昔の、あの世とこの世が二重に存在するファンタスティックな世界が舞台です。


色々な国のいろいろな人種の人たちが、様々な事情から攻めたり、守ったり、争ったり、戦ったりするのですが、単純な悪人はいません。
皆それぞれの立場で精いっぱい生きようとしているのです。
考え方の違いや立場の違いが敵を作り、悪人を作るのだという事をすごくはっきり感じます。
人間の欲や優しさや悲しさ、強さ弱さが政治的な事件のなかで浮き彫りにされていきます。


設定はファンタスティックですが、そこに動く人々や状況には非常にリアリティーがあり、今の日本や世界にも共通の問題提起があります。
だから人生経験のある大人も引き付けてやまないのでしょう。


情景描写にもすごくリアリティーがあって、その情景が目に見えるようで、本当にその場所にいるような気にさせられます。


『守り人』シリーズではバルサという女用心棒が主役の一人なのですが、彼女の格闘場面などすごい迫力です。
よくもまあ女性がこんな風に具体的に動作の細かいところまで描けるものだと感心していたら、後書きのどこかに、作者の上橋さんご自身、そういう武術をなさっていたと書いてあり、なるほどと感心しました。


家畜と一緒に生活する人々の生活ぶりや、厳しい自然との付き合い方など、本当によくかけているなあと感心することが多いのですが、上橋さんは文化人類学者で、アボリジニ研究のフィールドワークで、彼らと食事や労働を共にしていらした経験があったという事で、なるほどと、合点がいきました。
そういう意味でも面白い本です。


主人公たちは何度もすごい危機にさらされるのですが、思いもかけぬ展開が待っているのです。本当によくこんなことを考え付くものだと、上橋さんの想像力、創造力に何度も脱帽しました。


そしてこの本の魅力は、なんと言っても主人公たちにあります。
彼らの慎ましさです。
彼らの謙虚さです。
彼らの無欲さです。
彼らの勇気です。
彼らの優しさです。
その優しさは甘っちょろい優しさではありません。
とことん相手を思いやる、自己犠牲の優しさです。
『闇の守り人』では泣いてしまいました。
もちろん感動の涙です。


とにかく、この本を開いたら、グイグイ引き込まれ、最後までハラハラドキドキのし通しです。そして最後に温かいものが残ります。
こどもはもちろん、お大人にも、おじいちゃんおばあちゃんにもお勧めです。



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