安寿の小径

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アーミッシュの老人たち

アーミッシュの暮らしに癒しを感じるのは私だけではありません。

実はアメリカでも古き良き時代の生活を思い出させるアーミッシュのコミュニティへの観光が盛んになっていて、アーミッシュブームともいえる現象が起きているのだとか。

 

お菓子やキルトや木工製品の小さな店を出したり、レストランやアーミッシュ体験ツアー客のための宿泊施設など、いずれもアーミッシュらしく、小規模な商売を始める人も出てきて、彼らの心のこもった仕事ぶりはなかなかの人気だそうです。

そこでも活躍しているのが、農地を息子世代に譲ったお年寄りたちです。

高齢者のホームワーキングも盛んで、キルトや木工製品などを作って、作った製品をギフトショップに卸したり、若い世代に交じって、多くの高齢者が生き生きした様子で働いているという事です。

 

アーミッシュのお年寄りたちは忙しいのです。

アーミッシュは経験に裏打ちされた知識と知恵を持っているお年寄りを敬い、何かあれば彼らに意見やアドヴァイスを求めそれに耳を傾けます。

ですからお年寄りは大家族の中心であるだけでなく、教区の中でも果たす役割は大きいのです。

長年受け継がれてきた保存食やキルト作り、納屋造りなど、アーミッシュの伝統を次の世代に伝えるという役目を担っています。

 

現役を退いた老人たちは子供たちに大きな家を譲って、その後ろや隣に自分たちの小さな家を建て、そこで暮らします。

身体が動くうちは子供たちの家庭や教区の隣人たちのサポート役として、或いはアーミッシュ観光の担い手として忙しい日々を送っています。

 

「農業や家事を手伝いながらおしゃべりを楽しみ、孫たちの世話をしながらその成長に目を細める。」

「待っていてくれる人がいて、頼まれる仕事がある。ここにも私の居場所があると思うと心の底から幸せな気持ちになるんだ。神のお計らいによって、私はこの世にとどまり、沢山の恵みを受けている。それだけでも幸せな事なのに、自分が必要とされ、誰かの役に立っていると思えることは、身に余る幸せだよ。」

と、アーミッシュの老人たちは語ります。

 

年寄りには「きょうよう」が必要だと言われています。「きょうよう」とは「今日、用」の事で、「今日、用事がある」という事で、つまり、「今日、やることがある」という状態が、心身の老化を防止するのにとても大切だという訳です。

そういう意味でもアーミッシュの老人たちは身体の動く限り忙しく、平均寿命もアメリカ人の平均寿命より長いのだとか。

 

当然のことながら助け合いのネットワークがしっかりしているアーミッシュの高齢者はその7割以上が自宅で亡くなり、老人施設や病院、ホスピスで亡くなる人は多くないと言います。

老人施設への入居は自由ですが、入居する人は非常に少ないという事です。

「老人ホームに入りたがらないわけでも、親を老人ホームに入れたがらないわけでもなく、その必要がないだけ」なのだそうです。

家族や親族、コミュニティーの人たち、ホスピスなどの訪問看護所のサポートを受けながら在宅で最期を迎えるケースが多いのだそうです。

 

一つのコミュニティー(大体25から30世帯)で介護の必要な高齢者は多い時で3,4人位、その介護度は様々で、それぞれの介護度に合わせて、みんなが自然に役割分担をしているのだそうです。それというのもみんな多かれ少なかれ介護を経験しているので、お年寄りの状態に合わせた関わり方ができるのだとか。

 

アーミッシュの人たちの生死観はあるがままの老いと向き合い、老いのありのままを受け入れるというものです。

アーミッシュの患者を往診するお医者様の話を紹介します。

「患者の年齢にかかわらず、死を目前にした患者は意識があればですが、本人も家族も冷静です。―中略― はじめは彼らの冷静さは自分で意識してそう仕向けているからだと思っていました。でもやがて気付いたのです。彼らは自分自身をコントロールしているのではなく、私たちをコントロールしている自然を受け入れているのだと」

『主は与え、主は奪う』すべては神の大きな計画の一環であり、人の生や死も神の意志に基づいていると考えるアーミッシュの人々。

 

『多くを与える者は多くを与えられる』という言葉が聖書にありますが、正に、コミュニティーのために働き、コミュニティーのネットワークのために力を尽くし、親戚家族友人のために惜しみなく自分をささげてきたからこそ、このように素晴らしい人生の終焉が迎えられるのですね。

本当にうらやましい限りです。

 

私はと言えば、自分を優先し、面倒な事は外注してきた付けが今自分の老後に回ってきています。

自分の蒔いた種ですから、覚悟して引き受けるしかありません。

しかし、残り少ない人生とはいえ、まだ改善すべき時間が残されていると思います。

この本との出会いも意味のある事です。反省して、今からでも人の役に立つような生き方を、もっともっと意識的に心がけていこうと思います。

 

堤さん、良い本を書いてくださって、有り難うございました。

(引用文は全て『アーミッシュ 老いと終焉』堤純子著より)

 

 

 

               北千住のスピリチュアルな占い師   安 寿