安寿の小径

北千住のスピリチュアルな占い師 安寿のブログ http://anju.cho88.com/

まったく、猫ったら!

五年前のクリスマスの日に雌猫のクロちゃんを引き取ってから、近所に、クロとよく似た尻尾の長い黒いノラ猫が集まり出して、一時、この辺りは『黒猫通り』と呼ばれるほどでした。
5,6匹ほどウロウロしていて、他にも白黒の猫などがいたので、ボランティアの人が毎日餌やりに来ていたのですが、何があったのでしょう、一昨年あたりからそれがぴたりと来なくなったのです。


何か怖い目にあったのだろうか、みんな無事だろうかと心配していましたが、ある日一匹だけ、ひょっこり戻ってきました。
不思議な事に、我が家のクロちゃんの食欲が無くなった2月下旬頃でした。


なかなか人になつかず、餌をやろうと近づくだけで、「シャーッ」と威嚇するような猫で、私たちは『シャー』と呼んでいました。


シャーはどこかで餌をもらって元気にしていたらしく、まるまると太って毛艶もよく、以前よりもビクビクしなくなり、威嚇も減って、少し近づいても大丈夫になっていました。


若いノラたちの食欲は旺盛で、160グラム以上ある缶詰一缶ペロリと食べて、まだ足りない顔をしている時もあるくらいです。
我が家のクロもこんな風に食べてくれればいいのにと、モリモリ食べている姿にしばし見とれてしまいます。


その日もドアを開けるとシャーが待っていたので、缶詰をあけて餌の入れ物を目の前に置きました。


シャーが私の様子を窺いながらじりじり近寄ってきます。
餌の入れ物の位置をちょっと直そうとしたその瞬間、左手の人差し指をシャッと引掻かれました。
爪が鋭く血が出るほどでした。
「痛い」と言ってシャーを見ると怒られると思ったのか、後ずさりして離れました。
「大丈夫だから、早くお食べ」と私はキズを消毒しに部屋に入りました。


もう、かなり馴れているから大丈夫と、私が油断したのがいけないのです。
こちらがかわいいと思い、餌を与えているのだから、相手もこちらに親しみを感じてくれているに違いないと無意識に過信していました。


動物に対しても、人に対しても、自分が何かしてあげる時、相手にみじんも期待する気持ちを持ってはいけない、つまり自分の親切や好意に対して、相手に期待してはいけないのだと、今度の事でシャーにビシッと教えられた気がします。


猫は犬と違って平気で飼い主を引掻いたり噛んだりします。
突然、猫と暮らすようになったため、馴れない頃は猫も苛立っていましたし、私もイラチなクロに噛まれたり引掻かれたりで、腹の立つ時もありましたが、今では慣れっこです。


時間をおいて、シャーの様子を見に行くと、いつもなら食べてすぐどこかにいなくなるのに、シャーはまだいました。しかも少し食べ残して、餌の容器から少し離れた所に座っていました。
そして私の顔をじっと見てからどこかへ消えて行きました。
少しは悪いと思っているのかしらと感じさせるようなシャーでした。


クロの食欲は今ひとつで、昼間はほとんど寝てばかり、夕方から少し餌を食べるくらいです。
何なら食べるだろうと、スープやすり潰してあるもの、刺身をサッとゆでて細かく切ったものなどいろいろ試していますが、どれもあまり食べません。


それなのに、春のせいでしょうか、夜になると落ち着きがなくなり外に出たがります。
去年の病気以来、ほとんど外に出たがらなかったのですが。
それに避妊手術もしているし、もう20歳なのに....?


もともとクロは外に出てもすぐ帰ってくるのですが、まだ寒いし、黒い猫なので夜は危険で外に出したくありません。
でもその日はドアの前でしつこく鳴き続けるクロに負けて、「あんた食欲ないのに、元気ねぇ」と嫌味を言いつつドアを開けてやりました。


ところが10分経っても帰ってこないのです。
心配になって外に出てクロを探しに行きました。


小学校の校庭に入り込んでいるのだろうか、駐車場の車の下だろうか。
「猫は死に際になると姿を消す」などという言葉が頭をよぎります。
どこか見えないところに潜り込んでしまったらどうしようと、あちこち探しました。


薄着で出たので、ダウンコートを取りに家に戻ろうと鑑定所の前を通りかかると、いつもノラ猫に餌をやる場所で、熱心に餌を食べている猫がいます。
まさかと思ってよく見ると、なんとうちのクロちゃん!
シャーの食べ残しを食べているではありませんか!


「何食べてんのよ!」と慌てて餌の器を取り上げると、舌なめずりしながら、食べたそうな顔で見上げているのです。
ノラちゃんには悪いけど、彼らの食べ残しは病気感染が心配です。


もらえないと分かると、クロはさっさと家に戻っていき、寝床で毛づくろいを始めました。
並べてある自分のための餌には見向きもせずに。
「ったく!私の努力は何なのよ!」です。
それもノラにやっているのはクロが真っ先に食べなくなったメーカーの缶詰なのですから、訳が分かりません。


でもなんだか今までの心配が消えて、クロはまだまだ大丈夫だという気がしてきました。
桜の季節ももうすぐです。





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