安寿の小径

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上橋さん、本屋大賞 おめでとう!

私の大好きな作家 上橋菜穂子さんの『鹿の王』が、本屋大賞を受賞しました。
もちろん、ファンとしても嬉しいのですが、それよりも、前々から一人でも多くの人、特に若い人たちに読んでもらいたい本だと思っていたので、とっても嬉しいのです。


話の展開がまずスピーディで、予測できない方に話が進展していく面白さがたまりません。
本当に読み始めたら止まらず、寝る間を惜しんで読みたくなってしまう程です。


ストーリーを追うだけでも十分楽しめますが、そこに描かれた世界は上橋さんならではのどこか懐かしい、人も動物や植物と同じように自然と共に生きている、ちょっとスピリチュアル的ともいえる世界です。


王政が残る、今より古い時代。けっして豊かではなく、それぞれ生きていくのに精一杯な国々が、少しでも活路を求めて協力し合ったり、戦ったりするのです。
でもそんな時代に生きる人々は、なぜかとても活き活きとしていて、心が豊かで逞しく、詳細に描写される食べ物なんか、今のジャンクフードよりよっぽどおいしそうです。


そして素朴な人々の情の厚さ、絆の深さ、優しさ。
必要に迫られて、素性もわからぬ異国の人間を、生活の為に労働力として受け入れますが、次第に家族のように離れがたい存在になってゆくのです。


男女の愛情も、身分違いだったり、追う者と追われる者だったり、そんな立場の違いをお互い十分に理解しあって、決して相手に望まず、そっと互いに寄り添い、支え合い、離れがたく結びついていったり、だんだんにお互いに惹かれあっていったり。
燃え盛る炎のような恋愛というよりも、熾火のようにじんわりとお互いを温めあうような男女の愛なのです。
尋常ではない試練や孤独を味わった人間同士だからこそ築ける愛の形なのかもしれません。


恋愛なんかとっくに卒業した私でさえ、こんな恋愛ならいいなあと、ほれぼれするような恋人達です。
今恋愛中の人もこれから恋愛する人も、幸せな恋愛をするために、上橋さんの本をぜひ読んでみたら参考になるのではないかと思います。


上橋さんの作品を貫いているのは人や動物や自然に対する深くて優しい眼差しです。
国や政治にいやでも翻弄されてゆく人間の弱さや悲しさ、強さや逞しさ、その人間に利用されてゆく動物たちの姿を通して、国とは何か、政治とは何か、戦争とは何か、家族とは何か、生きるとは何か、人と動物との関係とは何か等など、いろいろ考えさせられます。


上橋さんの作品は、どの作品を読んでも、若い人は若い人なりに十分楽しめますし、人生経験を積んできた人はそれなりに深く感じるものや考えさせられるものがたくさんあって、実に滋養に富んだ作品だと思います。


今度の受賞をきっかけに上橋さんの本が売れに売れて、若い人を始めたくさんの人が上橋ワールドにどっぷり漬かったら、カラカラに乾いた大地に水がしみ込んでいくように、心がしっとりと潤って、日本中に優しい人が溢れるかもしれませんね。



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